激闘レースの最高峰の一つは間違いなくこのレース
わずか4センチ差で明暗を分けた99年 栗毛の怪物グラスワンダー
平成時代の有馬記念名勝負を振り返る「平成有馬列伝」。平成11(1999)年のグラスワンダーとスペシャルウィークの2頭が演じた、わずか4センチの鼻差で決着した激闘を取り上げる。同世代のライバルが宝塚記念以来となった対戦で、競馬史に残る壮絶なたたき合いを繰り広げた。
7月の宝塚記念でグラスワンダーに3馬身差をつけられていたスペシャルウィークは、この一戦が引退レース。ゴール前は2頭の執念のぶつかり合いとなった。
最後の直線の坂を上がったところで、グラスワンダーがわずかに抜け出した瞬間、外からスペシャルウィークが急襲する。2頭が鼻面を並べてゴールを駆け抜けた。中山競馬場のゴンドラ席からレースを見届けた尾形充弘は、敗戦を覚悟してエレベーターに乗り込んだ。
ところが、検量室でスペシャルウィークの調教師・白井寿昭に「おめでとうございます」と言うと、「いやいや、先生の馬が勝っていますよ」と告げられた。まさか。僅差の勝負だったが、写真判定でわずか4センチ(鼻差)ながら、内のグラスワンダーが先にゴールしていた。この時、勝利を確信したスペシャルウイークの武豊はウイニングランへ。直線に入ると15万人近い観衆から“ユタカ・コール”が起こる。
既に判定は出ていたのだが、JRA職員の計らいで、電光掲示板での表示はウイニングランを終えたあとに点灯された。検量室前に戻ってきた武豊は、馬上でぼうぜんとした表情を浮かべた。