横山典ゴールドシップ常識外れの春の盾V
「まあ、ひと言で言えば、彼らしいですよね。
一筋縄ではいかないところが彼らしいですよ」
横山典弘がレース後、
そう語ったのはゲートの場面。
なかなか入ろうとせず、
結局目隠しをされてゲートインすることになったのだが、
“彼らしさ”が出ていたのは何もゲートだけではない。
スタートからゴールまで、
伝統の淀3200メートルのすべてで
ゴールドシップらしさが爆発したレースだった。
「行けたら行こうと思っていたんですけど、
やっぱり行けなかったですね」
発馬こそ出遅れることはなかったが、
その後のダッシュがやはりつかなかったゴールドシップ。
1周目スタンド前に差しかかるころには
“ポツン最後方”の位置取りだった。
さあ、ここからどう仕掛けていくのか
ファンも関係者もいろいろと予測しただろうが、
誰も想像すらしなかった一手を横山典は打ってきた。
なんと、向こう正面の坂の上り前から
ステッキを振るってスパートをかけてきたのである。
かつて、菊花賞では
3角下りの手前からスパートするという
“常識破り”の競馬で二冠目をもぎ取ったゴールドシップだが、
今回の戦法はそれのさらに上を行く、
いい意味での非常識さである。
奇襲か、
それとも狙いすました作戦だったのか
いや、そのどちらでもない。
常識では測れないこの競馬こそが、
“ゴールドシップの競馬”と言うしかないだろう。