第50回有馬記念
レースは思わぬ展開を迎える。 ディープインパクトの伸び脚が明らかに鈍かったのだ。
これまでのレースで見せていた、鋭く、一瞬で他馬を飲み込むような脚とは、明らかに様子が異なっていた。
16万人がその目を疑うなか、前方には、英雄を尻目にするするとゴールに向かう馬がいた。
終始3・4番手でレースをしていたハーツクライだ。
これまでハーツクライの持ち味といえば、圧倒的な終いの脚だった。
前走のジャパンカップでも上がり34.4の末脚を見せ、レコード決着のアルカセットとハナ差の2着であった。
そんなハーツクライを、フランス人騎手のクリストフ・ルメールはあえて先行させていたのだ。
この日相対する絶対王者は、これまでのハーツクライと同じ追い込み脚質。
その更に後ろにつけることを避けたルメールの妙手であった。
ディープインパクトも坂を登って猛追してきたが、先にゴールしたのはそれを半馬身差かわしたハーツクライだった。
G1での勝利を知らなかったハーツクライが、敗北を知らなかったディープインパクトを下し、とうとうG1を手にしたのだ。
第9回ジャパンカップダート
2回目のジャパンカップダート挑戦の時のカネヒキリは4番人気に留まった。1番人気は、カネヒキリが休養中に台頭していた国内ダートGI6連勝中のヴァーミリアン、そしてサクセスブロッケンとカジノドライヴの3歳馬が2、3番人気に続いた。
出走15頭すべてが重賞ウィナーという顔ぶれのなか、カネヒキリは好位の外、ヴァーミリアンは後方を追走する。ややゆったりした流れのなか、3コーナーを過ぎ後続が前との差を詰め、ヴァーミリアンは外から一気に位置を上げる。カネヒキリは内に導かれ、逃げ馬の後ろでスパートのタイミングをうかがう。
横に広がった形で直線を向くと、逃げるサクセスブロッケンに外からカネヒキリが並びかける。さらに外からヴァーミリアンも迫ってきたが、残り100mで抜け出したのはカネヒキリだった。最後はメイショウトウコンの猛追をアタマ差凌ぎ、06年のフェブラリーS以来、約2年10か月ぶりの勝利を手にした。同時に、ジャパンカップダートは3年ぶり2度めの優勝となった。